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愛知大会現地便り⑦Letters from Staff

Respect Yourself. You Grow Yourself.

鈴木 桃子(すずき・ももこ 愛知県瀬戸西高校)

「コミュニケーション能力」って、なんだろう

 高校で英語を教え始めて4年、ずっと頭から離れない疑問です。英語を母語とする外国人と、流暢な英語で会話することでしょうか。その場の空気を読み取ってうまく立ち回り、相手を不快にさせないやりとりをすることでしょうか。少なくとも、日常的に使われている「コミュニケーション」という単語には、そのようなニュアンスが込められているように思います。そしてこの狭い解釈の元で、意思決定と改革が押し進められているように感じます。そこに疑問を挟むことは、時代に置いて行かれることなのでしょうか。悶々とした思いを抱えていたとき、こんな文に出会いました。

 I have said that education is a living process that can best be compared to agriculture. Gardeners know that they don't make plants grow. They don't attach the roots, glue the leaves, and paint the petals. Plants grow themselves. The job of the gardeners is to create the best conditions for that to happen. Good gardeners create the best those conditions, and poor ones don't. It's the same with teaching. Good teachers create the conditions for learning, and poor ones don't. Good teachers also know that they are not always in control of these conditions. (Creative Schools by Ken Robinson and Lou Aronica, 2015, p.102)

 Students grow themselves. だれも成長を邪魔することはできません。そう思ったとき、心がすとんと楽になりました。巷の議論に振り回されて、自分で自分を縛っていたのかもしれません。コミュニケーションとは、自分とは異なる他者を理解するために、相手を知り自分を伝えるやりとりのこと。価値を共有できないことも、不快な気持ちになることもあるけれど、その交流の可能性を信じることが、ことばを習うことであり、ことばを尊敬することだと私は信じています。

有機野菜を育てるということ

 「3年6組は有機野菜が育つ畑です。わたしたちは、桃子先生という農家の方に愛情込めて育てられました。だから、肉じゃがになっても、カレーになっても、素材の味を生かして食べる人みんなを笑顔にすることができます。」
 2018年3月、初めて卒業生を送り出したとき、クラスの生徒が学校通信に寄せたメッセージです。大学生になった彼女は幼児教育を専攻し、オーストラリア研修では、現地の子どもたちとの交流を経験したそうです。「ほんっとうに楽しかった! 高校で英語を好きになれてよかった!」と報告に来た彼女の目は、高校生の時にもまして、キラキラと輝いていました。私の仕事は、元気な芽が出るよう種をまくことと水をやること、そしてのびのびとその好奇心を育てることなのだと実感した瞬間でした。

ことばに向き合う夏に

 Teachers grow themselves. わたしたち自身も成長し続けましょう。ことばの力を信じて、生徒や授業、伝えたい価値観、そしてなにより、ことばそのものに真っすぐに向き合いましょう。どうぞ、この夏は名古屋へ足を運んでください。全国の先生方の実践と研究で学び合いましょう。明るいニュースも不安な気持ちも共有しましょう。気負わずにお越しください。実り多い旅になるはずです。ここ名古屋でお待ちしています。

『新英語教育』7月号より
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